連日連夜の発熱大会

9月は30日ぶっ続けで毎日発熱があった。熱が出るのにはなれたとはいえ、洞爺湖ロングラン花火大会なみの開催期間はさすがにこたえる。今回の典型的な発熱パターンはこんな感じだった。

  1. 朝起きると、38℃前後の熱
  2. 熱冷ましのソルコーテフを注射
  3. 寒気が襲ってくるので布団を一枚増量
  4. 朝食はほとんど食べられず、牛乳とカロリーメイトゼリーのみ
  5. 体温上昇、39℃、あるいは40℃まで行くことも
  6. 一定のポイントで寒気が止まり、身体が熱くなってくる
  7. 布団を一枚外し、アイスノンを所望
  8. 随時水分を取りながら、熱が下がるのを待つ
  9. 汗が出はじめたら下がりはじめのサイン
  10. ようやく平熱へ、ここまでの平均時間は5〜6時間

熱が出て何が困るかというと、その間はほぼ活動不能となってしまうこと。上のパターンで行くと、午前中はもう横になっているだけだ。また、発熱は地道にHPとMP=体力と気力を奪っていく。昼前にすっかり消耗してしまうので、午後の活動も思うようにいかない。なかなかオタ系の鑑賞をするのも、日記を書くのもきびしくなってきた。


病気的にももちろんよろしくない。なんらかの感染症か、真菌(カビ)か、GVHDか、白血病細胞が悪さをしているのか……。先生の側もいろいろと抗生物質を変えて試してみてはみるものの、効果は一向に上がらなかった。
前回までのパターンだと、白血球数が上がると熱が治まるのだが、今回は数値が思うように上がらない。さらに、現況では白血球数の上昇とともに悪い細胞も増えるので、「あまり白血球が上がられても困る」との先生の話だった。

高熱地帯で思うこと

38〜40℃ぐらいの発熱地帯ではいろいろと考える。

  • なにもできない、ということはなにもしなくていい、ってことか
  • 高熱で飲むポカリスエットの味は格別だな
  • このハイな状態を逆に楽しむにはどうしたらいいだろう
  • アイスノンと熱さまシートの効果について
  • 熱が出てるってのは病人ぽいよな

などなど、ぐるぐると思考と妄想が回転する。
しかしまあ、さすがにそろそろ治まってほしいところなのだけれど、原因が確定できなければまだ発熱は続きそうだ。

今までのあらすじ

各地からの戦況報告

対策本部に入ってくる各地の戦況報告はかんばしくなかった。
前回、究極兵器(骨髄移植)で闇に葬ったはずの白血病怪獣。だが、ヤツはまだ生き残っていたのだ。残存白血病細胞から増殖・再生し、4ヶ月の時を経てまた街に上陸を果たした(再発)。
強力な化学兵器(化学療法)、究極兵器の攻撃に耐えた細胞を元にしているだけあって、ヤツは各種耐性を持ち相当にしぶとい。免疫抑制剤カット攻撃抗がん剤攻撃抗がん剤大量攻撃、ドナーリンパ球輸注攻撃、どれも劇的な効果を上げるまでにはいたらなかった(完全寛解せず)。
 ただ、なんとか活動を抑え込むことには成功したようだ。白血病怪獣は今、眠りについている(白血球の数値が低いまま)ようだ。


この状態をもって、緊急会議が対策本部で開かれた。
「ヤツにはもう、通常攻撃は効きません」
「これ以上攻撃をしかけても、街への被害(身体への悪影響)が甚大です!」
「司令、究極兵器(移植)の使用許可を!」
「しかし、今のまま使ってもうまく行く確率は……」
「もう、それしかヤツを倒す可能性はありえません」
「うぅむ、やむをえん。いつまたヤツが動き出すかわからん。攻撃は早めに行くぞ」

10月〜11月に臍帯血移植

というわけで、10月〜11月ごろに再移植を行うこととなりました。今回は臍帯血移植になります。臍帯血移植の場合、実施する日時を明かしてもかまわないので、そのあたりで随時更新みたいなことができればと考えています。
なお、上のあらすじは、ほぼノンフィクションです。

病室で不在者投票

今回のAra-c大量療法は、心配したほどさほど副作用はなかった。髪の毛が生え際を残した妙な脱け方をしたほかは、散発的な吐き気、発熱があったのみ。逆にいうとクスリの効果がさほどなかった、ともいえるわけで。


今日は、東京から出張のついでということで会社の同僚、Uさんがお見舞いに来てくれた。渋い選択のお菓子と、会社の最近の事情、お土産屋さんのお姉さんがメイドさんだった話、自分の病状話、北海道話。などなど、新鮮な会話ができて楽しかった。カルドセプトの対決にも付き合ってもらえて多謝。


午後には、衆議院選挙の不在者投票が病院で行われた。これは、事前に申し込んでおくと衆議院選挙の投票が病室でできるもので、投票用紙の請求やその後の送付などはすべて病院がやってくれるしくみだ。やっぱりレースは賭けておかないとおもしろくない。
ぼくの選挙区は住民票を移してないので東京一区。それなりの注目選挙区だ。北海道にいながら、東京の選挙に参加できるのはありがたいが、情報があんまりないのが少々困るところ。北海道の選挙区についてはくわしくなったのだけれど。


総務課長らしき選挙管理委員長と、事務の女性がふたりで病室をまわり、投票を受け付けてくれる。ちゃんと候補者一覧も用意されており、東京一区は又吉イエスマック赤坂、など泡沫候補が多いのも特徴だ。あらかじめ、決めてあった候補と政党を書いて渡した。この一票がどうなることやら。

Ara-c大量療法開始

前回の治療が奏功しなかったこともあり、次の治療はAra-C(キロサイド)大量療法を行うことになった。これは、薬物耐性を持った白血病細胞対策の先日書いた2種類のうち、

後者のほうに当たるもので、通常使われる抗がん剤を、増量してアタックするものだ。


ようするに、「いつもの量じゃ効かねぇんだろ、じゃあ40倍にしてぶっこんでやんよ」というハナシだったりする。
たとえば、酒の量を40倍にして飲んだら? 睡眠薬を40倍にしてみたら? と考えてみればその具体例を多少はわかってもらえるかもしれない。正直患者としてはおっかねーとしか言いようがない。
もちろん、医学的に安全は担保されているし、副作用を起こさないための支持療法も万全なのだけれども。


とはいえここまできたら、自分にできることは粛々と点滴を受け入れることだけだ。治療スケジュール開始の10時まで5分。さて……。

一泊二日の一時退院

白血球数は一度下がってまた上がった。これだけ見れば無事寛解、なのだが、実際は末梢血にまだBlast(芽球)があるようで、寛解にはいたらない。チャレンジ第一回目は残念ながら失敗に終わったようだった。


とはいえ、白血球数はここ最近ではいい方の1640。いったん一時退院してリフレッシュしては、という提案があった。一も二もなく受けたのはいうまでもない。
しかし、今の身体の状態はあまりよろしくない。前のように2週間などはムリな話で、一泊二日なら、という話だった。これだけの短い期間なので、荷物も病室に置いていってよく、気分的には外泊、という感じだ。


外に出たらやりたかったこと、というのは入院してるといろいろとたまってくる。
今回のToDoはこんな感じで、家族の協力で全部こなすことができた。感謝。やっぱり外はいいものです。

  • 札幌ラーメンを食べる
  • 次期主力PCの選定、VAIO type AとFの現物を見る
  • 20インチテレビのチェック
  • 両親に好きな献立をリクエストして夕食を
  • 本屋へ行って雑誌立ち読みして購入
  • 床屋行ってくる
  • 話題のエヴァ破を見る、圧倒されたが、それほどだったかというと……

病院に戻ると、前回点滴針を入れていた血管が異様に腫れてきた。カルドセプトでいうところのミューテーション。病名的にいうところの血管炎。これは地道に痛く、冷やしつつ寝ることに。

ちょい苦手の末梢血点滴

採血、マルク、CV挿入、薬を飲む、MRI、だいたいの治療はさほど苦にしないのだけれど、前腕部(手首からヒジの間)から点滴針を入れる、末梢血点滴だけはちょっと苦手だ。
前にも書いたが、どうもぼくの手首の静脈はなかなか見えにくいうえ、蛇行しているらしく、少々太めの点滴留置針をまっすぐ刺すのが難しいらしい。


最初のころは挿入がうまく行かず、数回かかったこともあった。点滴針は注射針より太く、注射針がプスっという感じなら、点滴針はブスッという感じでさすがに効く。当然麻酔も使わないので、痛さもダイレクトだ。ただ、最近は看護師さんも慣れてきたのか、一発でうまく行くことが多くなった。


今日は、ここのところ続いている高熱の原因としてCVからの感染が考えられる、ということでカテーテルを抜いた。なので、くだんの末梢血挿入となったが、今回も一発OK。次回もかくありたいものです。

病気とストレス

夜半に、友人のMくんがお見舞いに来てくれた。
最近読んだ本を貸してくれたり、病状を語ったり、オタ話に興じたり、と、そのうち仕事についての話題になった。上司のことや仕事内容のことでストレスがたまる部分がある、というちょっとしたグチだ。


1年以上休職している自分だが、たしかに働いてたときにはそれなりのストレスがあったな……、なんてことを思い出しながら、
「まあおれも、この生活あんまりストレス感じてないところはあるしなー」
と返してみると、
「いやいや、生きるか死ぬかの白血病患者がストレスないわけないだろ」
とツッコミを受ける。そりゃそうか。

自分でどうにかなること or ならないこと

お見舞いのあと、ちょっと考えてみた。
世の中には、自分の力でどうにかなること、と、ならないことがある。
で、ぼくの病気は、というとこれはもう完全に後者だ。自ら望んでこの病気にかかったわけじゃないし、治療の結果がどうなるか、自分の意志だけでどうにかなるものでもない。これからどうなるのか不安はある。あまり状況がよくないこともわかっている。ただ、そのへんを脇に置いておくことさえできれば、ストレスはぐっと少なくなる。


入院している理由が、シンプルに「病気を治す」ため、というのもいい。
ノルマがあるわけでもなく、人間関係に悩まされることもない。体調が悪くないときの一日は、休みの日の引きこもり生活と同じようなものだ。
まあ、これは一種の防衛機制、逃げ的な考え方かもしれない。病気を、自分の中に受け入れ切れてない部分もある。それに、身体的な不調が強く出てきたらそれどころじゃないだろう。さて、自分はどれだけのストレスに耐えられるのだろう。