「他人に迷惑をかけない」「なるようになる」「とりあえず今が幸せ」
「今日は2単位、2時間程度ですよ」と看護士さんの言葉に、輸血というのは意外に時間がかかるものだな、と思った。昔、200ccを献血したときにかかった時間は十数分だった。なるほど、出すのより入れる方が時間がかかるということか。ふたたび訪れた大病院の処置室では生まれてはじめての輸血処置が行われていた。
しかし、こんな長時間うすぼんやりする機会は日常ではなかなかない。左の肘に軽い熱さを感じながら、今までの自分はどう生きてきたんだろう、ポリシーみたいなのってあっただろうか、と思い返していた。
1.「他人に迷惑をかけない、他人からも迷惑を受けない」
これには元ネタがある。「蒼き流星レイズナー」というアニメに出てくるロアンというキャラクターだ。アニメックの記事で見かけた彼の性格の表記は“他人の領域に踏み込まない、自分の領域に踏み込まれない”だっただろうか。当時中学生の自分は相当にその影響を受けたおぼえがある。自分はこういう一匹狼タイプのキャラが好きで、初代ガンダムではカイ・シデンがお気に入りだった。
2.「まあなんとか、なるようになる」
「今までだって、なんとかなってきたじゃないですか」という究極超人あ〜るのセリフは自分の口癖でもある。さしたる努力もせず、積極的な選択もせず。引かれたレールにとりあえず乗ってみる、でもまあ、なんとかなるんじゃないか、と。
3.「とりあえず今がなんとなく幸せ」
これはポリシーというか、オタ生活を過ごしながらの処世術みたいなものかもしれない。アニメを見るのは楽しい、エロゲをやるのは面白い、次々に新しい作品が出てきて、オタク生活は今が一番面白い……。なんとはなしの現状肯定だ。
これを今の現状に置き換えてみるとどうだろう。
まず1番は完全にアウトだ。発病が判明して以来、親、友人、家族、同僚、上司、数え切れない人たちに迷惑をかけてしまった。そしてこれからもかけるだろう。特に、満足に動けなくなってからいいように付き合ってもらっているNくんへの感謝と心苦しい思いはもう……。人は、他人に迷惑をかけずには生きていけないのか。今さら、なの、だが。
2番は今になってもあまり変わっていない。なるようになる。システマティックな大病院のレールに今はもう乗るしかないだろう。まな板の上の鯉の心境だ。
3番についてはどうだろう。たしかに今の状況はそれはそれで面白い、とも思える。会社を休める。寝てるだけでいい。他の人にはありえないような経験ができる。キャラ付けとしても強力だ。ブログのネタにも困らない。……か。