ふたつのタンコブ

また、やっちまった……。
ズキズキするおでこを濡れタオルで押さえながら病室に戻る。
白血球に加えて、出血時に血を止めるはたらきのある血小板も減少しているこの時期、ケガは御法度だと先生からも言われていた。なのに、まただ。
前回は、ベッドから立ち上がるときにアイソレーター(ベッドの半分をおおう大きめの空気清浄機)のフレームに頭をぶつけた。今回は、ハミガキの最中、うがいをするときに勢い余って水道の蛇口におでこをぶつけてしまった。
しかも今の頭は五厘刈り。ダメージも長髪時より3割増しという感じだ。

ちょうど血圧を測りに来た看護婦さんにその旨を伝えると、やがて当直の先生が様子を見にきてくれた。ざっと診断したあと、
「うん、聞いたときはびっくりしたけど、それほど出血はないみたいだし、大丈夫でしょう。だけど今、せっかく順調に行ってるんだから、ケガには充分に気をつけてくださいね」
との話。とりあえず今夜は、患部を冷やしながら寝ることにしよう。
それにしても日常生活には危険がいっぱいだ。用心用心。