脱毛についてのあれこれ

午前6時、カーテンからこぼれる朝陽に目を覚ます。さあ今日もバリッと行くか、とふとベッドを眺めると、枕に大量の毛髪が……。
ついに来た。これが、抗がん剤の副作用で有名な脱毛症状か。抗がん剤投与終了からしばらくたち、「もしかして自分の場合髪の毛は抜けないのでは……」とも思ってもいたのだが。
とはいえ、もうすでに五厘刈りではあるし、脱毛自体にさほど抵抗はない。治療が終わったらまた生えはじめるというし、なるようになるだろう。


こんな場合の脱毛は、ふだんのそれとは違うことが三点ある。
一点目は、一気呵成に髪の毛が抜けはじめること。ハラハラではなくドバッという感じで抜けていく。試しに濡れタオルで頭をふけば、びっくりするぐらいの髪の毛が付く。枕やベッドに付く大量の毛髪を、コロコロを使って取り除くのが毎日の日課になった。
次に、頭部全体の毛がほぼ均一に抜けていくこと。生え際や頭頂から徐々に、ではなく全体の密度がいっせいに減っていく。どこかの闘病記にあったマダラハゲ、という表現が的確だろう。
また、ふだんこの手の症状は「だんだん生え際やばくなってきたんじゃないの?」なんて若干の揶揄の対象になることが多いが、抗がん剤の副作用となれば話は違う。「大変だね……」とむしろ同情の対象になりえるのだ。
さて、どれぐらい抜けるのやら。スキンヘッドまで行くのだろうか。