とあるコーポの一室で

それは奇妙な感覚だった。
日常が非日常になれば、非日常が日常になる。
2ヶ月以上空けて戻った東京のアパート。こんな広さだっけか。こんな匂いだっけか。それはまるで、他人の家に来たような違和感だった。


窓と玄関を開けて換気をし、ベッドシーツを洗濯に出かける。積んである百合同人誌をペラペラとめくり、ベッドに寝転がってテレビを見ていると、徐々に感覚が戻ってくる。ああ、たしかにここは自分の部屋だったな――。


入院前に盛大な水漏れとともに洗濯機が壊れたので、今は近所のコインランドリーが頼りだ。
今回、久々にスイッチを入れてみたエアコンは冷風が出ず、電源ランプが点滅している。説明書を見ると、要修理でサービスマンを呼べ、とのことだ。
……洗濯機が壊れ、エアコンが壊れ、住人も壊れる、か。電化製品にも人間にも寿命があり、メンテが必要なのだろう。
幸いにして今日も明日も夜は涼しいようで、エアコンなしでも眠れそうだった。