無菌病室への移動
地固め療法で白血球数が順調に下がってきたので、感染予防のため無菌病室へと移動することになった。無菌病室といってもいろいろと種類があり、自分が移ったのはクラス10000といわれる比較的軽い基準の方。骨髄移植の際に使う特別病室はまた別にある。
見た目は今までの病室とほとんど変わらない。違いと言えば、大きめのエアコンが装備されているのと、滅菌水が供される洗面台が付いていること。天井には1m×3mほどの空気清浄機付きのエアコンがはめ込まれており、低周波の風切り音を24時間響かせている。サーバーマシンが枕元にあるようなもので、寝るときには少々気になりそうだ。
同じ病院内でフロアも同じなので、引越はかんたんに終わった。PS3やらスピーカーやらを乗せているTV台はコードを抜いて、戸棚の荷物はベッドの上に置いて。あとはそれを新しい病室まで転がしていくだけだ。どさくさにまぎれてベッドテーブルも大型のものに変えてもらった。
向かいの病棟しか見えなかった前回の病室より、眺めもよくなった。今度は、人と車が行き交う幹線道路と建築中のマンションが楽しめそうだ。
前回に続き今回も個室。
大部屋がいいか個室がいいか、は入院患者にはなかなか悩ましいところだが、自分的には個室のほうが合っている。プライバシーが保てるし、TVも音を出して見られる。うららかな陽射しの中でゲームなどにひとり耽溺でき、オタライフにはぴったりだ。幸いにしてこの病院では差額ベッド代もかからない。
難点は他の患者さんとの接点がまったく持てないところで、おそらく同じ病棟にいるだろう同類の病気の人とは一人も知り合えていない。新しい病室のカレンダーの9月4日の欄には、前の住人のであろう「もえの誕生日♪」との書き込みがあった。誰なんだろう、もえさん。
夜には元同僚のMさんからの半年ぶりぐらいの電話があった。
最近あまりパソコンの調子が良くない、買い換えようと思ってるけど、Macとかどうだろう、といった相談だった。今Macは全然アリなんじゃないですか、Windowsも動かせるし、的な回答をしつつ、そういえば、白血病の話はMさんに全然してなかったな、と思い返す。
そしておもむろに切り出したところ、「ええーーっ!」とかなり驚いた様子が。うむうむ、こなた風に言うと「これだ、私の欲しかった反応はこれなんだ」というか。やっぱりこの病気、普通にインパクトあるよな……。