一面の銀世界と、地固め療法4回目

朝の内服薬

朝、病室のカーテンを開けると外は一面の銀世界だった。
今回の再入院は11月28日。割り当てられたのは角部屋個室。寒冷地特有の二重窓からは、駐車場や一軒家、そして手前から奥へ続く一本の道が見下ろせる。この道は最寄り駅へ向かうルートになっており、朝夕には学校や会社へ向かう老若男女が行き交う。さらに奥には、天気がよければ札幌近郊の山並みも見渡せる。
窓越しにそんな景色を眺めながら、こちらとむこうとは何が違うのか、なんてことをぼんやりと考える。むこうは健康でこっちは病人。むこうは自由でこっちは不自由。もちろん、それぞれに自由も不自由もあるのだけれど。
積もったり、溶けたり、を繰り返しながら、やがて雪は根雪になり、冬は白色に染まっていく。そういえば上京したてのころ、まったく雪が降らない冬に違和感を覚えたのを思い出す。やっぱり、雪のある冬が僕の知っている冬だ。


そして今日から、地固め療法4回目、トータルで5度目の抗がん剤治療が始まる。
「移植前の最後の治療になりますので、少し強めの量になります」
との説明が先生よりあり、今回投与される抗がん剤は、トータルで4種類。キロサイド、ラステット、オンコピン、フィルデシン、を点滴と注射で10日間、というスケジュールだ。いつもは2種類5日間なので、種類も日数も倍になる。
「人の身体は食べたものからできている」なんて言葉があるが、そうなるともう、自分の身体の半分ぐらいは、よくわからない点滴液と内服薬でできているに違いない。
できれば年内に終了して一時退院できれば、という話もあったが、こればかりはどうなるかはなんともいえないようだった。