一時退院前の胃カメラ&大腸カメラ

お正月の食卓には、おせち料理が一通りならんだ。エビや茶碗蒸しなど、病院食とは思えない豪華さに驚く。お雑煮もあったのだが、具材はモチではなくてイモダンゴ。さすがにモチをノドに詰まらせて仕事を増やすのはまずいのだろう。
休みということもあって、家族や友人がお見舞いにも来てくれた。トランプや対戦を楽しんだり、お守りや破魔矢の差し入れもうれしかった。なんとか乗り越えたいな、と思う。


各種の数値もなんとか上がりはじめ、点滴も日程が終了。1月5日にはルート(中心静脈カテーテル)が抜けた。今回の点滴ルートは約3ヶ月保ったことになる。面倒なことも多々あったものの、注射も抗がん剤も輸血もつなぐだけで入るわけで、トータルで見れば楽ではあった。


年越しを病院で過ごしたついでに、術前検査もいくつかこなしていくことになった。歯医者、肺活量、CTスキャン、このあたりは楽勝だったが、問題は胃カメラと大腸カメラ。いわゆる内視鏡検査だ。どちらもはじめての経験だけに、不安が先に立つ。


最初に行われたのは胃カメラの方。「鼻から入れる快適な内視鏡」みたいなポスターが院内に貼ってあったので、すっかり鼻から入れるのかと思っていたら、より精密な検査が必要とされる自分の場合は、どうやら口かららしかった。
朝食抜きで内視鏡室に呼ばれて、まずはノドの麻酔薬を服用する。ネバネバするその液体を口に含み、上を向き、ノドにためたまま5分ほどガマン。
その後、施術室に移って、専用マウスピースを着用、ずるずると胃カメラが挿入されていく。麻酔を入れてるとはいえ、ノドの付け根に異物が当たる嘔吐感はそれなりにあり、看護師さんに背中をさすってもらい、指示に従って深呼吸を繰り返してなんとか乗り切る。「自分の胃の中見てみるかい?」と言われたものの全然そんな余裕はなく。
これは割とキツく、終わってからもしばらくオエッとする感じが残った。


さらに次の日には大腸カメラだ。前日の昼食からはそれ用にメニューが変更され、昼はビスケットとおかゆとスープ、夜はスープのみだ。できるだけ腹に入れるモノを少なくしておこうという公算だろう。
翌日朝からは、2リットルの下剤を3時間かけて飲み下す。味自体はうまくもまずくもないのだが、モノがモノだけにお腹は急降下をしつづけ、何度もトイレと往復するうちに、すっかり便は水状になった。これで準備はOKということのようだ。
大腸カメラ自体は、下の方から比較的すんなりと入った。これはそんなにツラい感じもなく、なにか体内でニョロニョロとした感じがする程度。触手ってこんな感じなんだろうか、とか思った。
こちらは多少が余裕があったので、腸内の様子を自分で見ることができ、「ここが小腸の入り口になります」「このあたりが大腸です」「若いからかキレイですね−」「S字結腸を通ります」と、内視鏡医のガイド付きで見る自分の体内は不思議な感じだった。


1月8日と9日に検査をこなして、一時退院は1月11日。
ただ、白血球の数値はまだ基準の2000に至らずの1800。おそるおそる先生に、
「あのー、やっぱり寿司とかは食べちゃまずいですよね……?」
と聞くと、返ってきたのは
「いえ、これぐらいあれば大丈夫ですし、しばらくナマモノも食べられなくなります。好きなものを食べてきていいですよ」
という答え。
それはそれでありがたい。のだけれど、なんかこんなセリフどっかで聞いたな、と思ったら、ドラマで見た、末期がん患者への言葉にこんなのがあったような気がする。いやいや、気のせい気のせい。リミッター解除で、食べたいものを食べたいだけ食ってくることにしよう。