オタ部屋とのしばしの別れ

土曜日の診察の結果、月曜から入院、即治療をはじめることとあいなった。いったん帰宅、入院のための準備をはじめる。
とはいうものの、今までの人生で入院なんて経験がない。病院からもらったパンフレットや、ネットの断片的な情報を見ながら、必要と思える物をスーツケースに詰め込んでいく。足りないものはあとで買い出しに行くことにしよう。


それにしても入院か……。となると、この部屋ともしばしのお別れとなるわけだ……。
思わず、つぶやきながら部屋を見回してみる。
ひとり暮らしのオタは、多かれ少なかれ自分の部屋に愛着を持っている。
そこは、生活の場であり、趣味の場であり、好きなものだけを集めた場所だ。メディアを摂取し、欲望を満たし、身体を休める。モテるための部屋じゃない、仲間を集めて騒ぐ部屋でもない、だけど自分にとってはどこよりもくつろげる場所。

自分の部屋もそうだ。
築十数年、アパート1階のワンルーム。玄関を開けると細長いキッチン、右手のドアにはユニットバス。奥には、6畳ほどのフローリングのワンルーム
二十年近く買いためた同人誌とコミックは、下駄箱と押入とワゴン棚に詰め込んだ。PCとAV機器はエレクター2台に集約し、いつでも配線をいじれるようキャスターを装備。音声はすべてAVアンプに接続し、TANNOY2chスピーカーとONKYOの5.1chサラウンドを切り替えて駆動させている。メインモニターはSONYのハイビジョンブラウン管29インチ、部屋の長辺には80インチスクリーンとプロジェクター……なんて、自分の部屋のことならいくらでも語れる。

荷造りの手を休めて、もう一度部屋を見返して、つぶやいてみた。
「また、戻ってくるよ」